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三木谷が動いた。楽天、爽快ドラッグを買収し8兆円市場をロックオン

楽天は、医薬品のネット販売大手「ケンコーコム」に続き、「爽快ドラッグ」も89億円で買収。そこには「8兆円市場」を狙う野望がありました。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、この買収劇が引き起こすであろう、楽天と「抵抗勢力」の壮絶な戦いを予言しています。

楽天が爽快ドラッグを買収、8兆円市場が真の狙い!?
こんにちは、佐藤昌司です。楽天は10月28日、生活用品や飲料・食品、医薬品などをインターネット通販にて提供する爽快ドラッグの全発行済株式を約89億円で取得し、完全子会社化すると発表しました。

楽天は先行して、生活用品や飲料・食品、医薬品などをネット販売するケンコーコムを完全子会社化しています。両社を傘下に収め、事業規模の拡大を推し進めるようです。通販サイト利用者を囲い込む狙いがあります。楽天は定期購入が見込める生活用品や飲料・食料を成長分野として重要視し、ジャンル戦略強化の一環として買収を決めています。

成長分野としてもう一つ見逃せない分野があります。それは「医薬品」です。ネット販売の特性を生かし、薬局やドラッグストアが近所にない人や対面で購入することが恥ずかしい薬を購入する人などをターゲットにすることで売り上げを伸ばすことができます。

2009年の改正薬事法厚生労働省による運用を定めた省令の施行以降、一般用医薬品(市販薬)の第1類(最も副作用リスクが高い医薬品)と第2類(次にリスクが高い医薬品)のネット販売が禁止されていました。

ケンコーコムなど2社はネット販売の再開を求め、厚労省を相手取り訴訟を起こし、13年1月に最高裁厚労省の上告を棄却、ケンコーコム側の勝訴の判決を下しました。判決を受け、同社は一般用医薬品のネット販売を全面的に再開しています。14年6月からは正式に第1類医薬品と第2類医薬品のネット販売が認められています。

 

しかし、全面的なネット販売の解禁とはなっていません。劇薬指定の5品目は販売が禁止、医療用(処方薬)から切り替わって間もない23品目は切り替え後3年間ネット販売が禁止されたからです。これは、店舗での対面販売により安全性を確認する必要があるとの主張によるものです。

これに対してネット販売業者は強く反発しました。楽天三木谷浩史氏は「最高裁違憲判決が出たにもかかわらず、ゾンビのようにもう1度規制をかけることを許してはいけない」と怒りをぶちまけています。さらに、政府の産業競争力会議の民間議員を辞めるとまで言い出し、抗議の意を示しています(後に撤回)。

13年11月、医療用(処方薬)から切り替わって間もない23品目と劇薬指定の5品目のネット販売を禁止・制限する薬事法改正案が閣議決定されました。これに対しケンコーコム東京地裁行政訴訟を起こしています。

医薬品のネット販売について、長らくネット販売業者と国は争ってきました。ネット販売業者はドラッグストアや薬局などにとって脅威となる存在です。そのため、国に働きかけることでネット販売業者による医薬品の販売に規制をかけてきました。これに対して楽天の三木谷氏やケンコーコムは噛み付いていったのです。

楽天の爽快ドラッグの買収は、医薬品の販売を強化することも狙っているようです。爽快ドラッグは製薬会社の小林製薬が中心となって設立されました。そういった経緯があるため、爽快ドラッグは医薬品業界に強い接点を持っていました。そのため、爽快ドラッグの買収により、楽天は医薬品のラインナップと流通網を強化することができます。

ところで、小林製薬はドラッグストアや薬局と激しく対立した経緯があります。発端は小林製薬が12年9月に第3類医薬品のネット販売を始めたことにあります。そのことに対してドラッグストアの共同仕入れを行う組織、ボランタリーチェーン日本ドラッグチェーン会小林製薬に質問状を送付しました。製薬会社がネット販売を始めることに異を唱えたのです。大手のドラッグストアも加勢し、小林製薬の商品をボイコットすると圧力をかけました。結局、小林製薬はネット販売を断念せざるを得ませんでした。

楽天小林製薬はドラッグストアや薬局と対峙したという共通点があります。楽天は買収した爽快ドラッグを通して小林製薬との結びつきを強める思惑があっても不思議はありません。それにより楽天は医薬品のネット販売を強化し、ドラッグストアや薬局に挑戦していく意図があると推察します。

 

さらに、楽天は医療用医薬品(処方箋が必要な薬)にも切り込んでいくと推察できます。というのも、医療用医薬品は国内医薬品市場で9割以上を占め、8兆円を超える巨大なマーケットだからです。厚生労働省「平成26年薬事工業生産動態統計調査」によると、14年の医療用医薬品の市場規模は8兆8,831億円にもなります。同年の一般用医薬品は7,280億円にしかなりません。楽天はこの巨大な市場である医療用医薬品に狙いを定めていると思われます。

しかし、医療用医薬品のネット販売は認められていません。一方、米英独などではネット販売が認められています。規制緩和により日本でも認められれば大きなビジネスチャンスになります。

とはいえ、医療用医薬品市場に切り込んでいくためには、巨大市場に巣食うドラッグストアや薬局、医師、薬剤師、族議員といった抵抗勢力と対峙していく必要があります。もちろん、抵抗勢力既得権益を死守しようとするでしょう。

楽天が巨大な抵抗勢力に対抗するには味方が必要です。そのため、爽快ドラッグの買収を、医療用医薬品市場に切り込むための一里塚にしようとしているのではないでしょうか。まずは一般用医薬品市場で実績を上げ、後に医療用医薬品市場に切り込んでいく戦略です。果たして、楽天のこの壮大な野望は達成するのでしょうか。今後が注目されます。

image by: Wikimedia Commons

出典  http://www.mag2.com/p/news/228911/3f:id:takeruhonor2011:20161124104622j:image